0. はじめに
Raspberry Piを組み込んだノートPCであるpi-topの新しいバージョンが2017年10月に発売されたのですが、なかなか買う気になれずにスルーしてきました。pi-topに関しては2015年10月頃に発売された旧バージョンを入手し、いくつかブログ記事を書いてきました。
- Raspberry PiをノートPC化するPi-Topが届いた
- Raspberry PiをノートPC化するPi-Topで電子工作(LチカとI2C通信)してみた
- Raspberry PiをノートPC化するPi-Topにユーザーpiでログインしてみた
- JessieにアップデートされたPi-Top OSを試してみた
- とにかくキーボードのクオリティが低すぎる。なかなか反応しないキーがありノートPCとしては使い物にならない。外付けでUSBキーボードをつなぎたくなるレベル
- なんらかの原因でバッテリーが突然使用不能になる。私の場合、使用時にはACアダプタの接続が必須となってしまいました
旧バージョンでそんな体験をしていますので、決して安くはない価格でまた似たようなクオリティの製品だったら嫌だなあと思い、なかなか手を出しにくかったのです。
しかし、発売後しばらくたってもこの新バージョンが旧バージョンと比べて進化しているのかどうかなど、私が知りたい情報があまり入ってこないので、諦めて購入して自分で確かめてみることにしました。
1. 外観
そんなわけで購入したpi-top v2の外観です。
pi-top v2の外観
旧バージョンに比べると、マウスのタッチパッドの位置が一般的なノートPCと同じ位置になり、洗練された印象を与えます。サイズは一般的なノートPCと比べるとかなり大きく持ち運びには向かないのですが、これは旧バージョンからそうですので割り切るしかないでしょう(ちなみにサイズは34.5x22x4cm、重さは1.5kg)。
なお、OSは公式サイトからStretch系列のpi-topOSをダウンロードして用いました。付属のOSインストール済SDカードには、古いJessie 系列のpi-topOSが入っていたためです。
なお、付属のSDカードはSanDisk Ultra 8GBでしたが、このSDカードは動作中に瞬間的に動作が固まる現象(プチフリ)が多いように思われますので、別のSDカードを用意した方が良いと思います。
Stretch系列でもいつも通り、起動時にスプラッシュスクリーン動画が流れ、Dashboardというアプリケーションが自動起動するのですが、これを無効にするには、下記の2コマンドをターミナルで実行すればOKです。
sudo systemctl disable pt-splashscreen.service sudo systemctl disable pt-os-dashboard.serviceさらに、ターミナルソフトウェアが最大化して開くのを抑制したければ、「Raspberry PiをノートPC化するPi-Topにユーザーpiでログインしてみた」の設定を参考に.config/openbox/lxde-pi-rc.xmlを編集してください。
組み立て時の写真は撮っていませんが、基本的にはRaspberry Piを組み込むだけですので、旧バージョンより組み立ての難易度は低めです。ただし、はめ込みのかみ合わせが合いにくかったり、ねじ穴の位置が微妙にずれていてねじが締めにくかったりなどの問題があり、慎重な作業が必要になりますので、小さな子供に任せられる作業ではないと思います。
2. キーボード
さて、問題のキーボードですが、結論から言えば旧バージョンのpi-topのものに比べると、大幅にクオリティアップしています。
pi-top v2のキーボード
pi-top v2内蔵のキーボードとマウスだけで作業をしても、まったく苦にならないレベルです。
何を当たり前のことを、と思うかもしれませんが、旧バージョンは普通の作業を内蔵キーボードとマウスで行うだけでもストレスを感じる作業だったのです。
ただし気になる点もいくつかあり、例えば図からもわかるように、
- 左Shiftキーが小さく、その右隣に<、>キーがある
- Enterキーの右隣にHome、Endキーなどがある
3. キーボードをスライドさせる
pi-top v2の目玉の一つはキーボードをスライドさせてGPIOにアクセスできることでしょう。緑色のプラスチックに触って下図のようにスライドさせると、素材のおもちゃっぽさを感じずにはいられないものの、仕組み自体はなかなかよくできていることがわかります。
pi-top v2のキーボードをスライドさせた様子
スライドにより、図のようにRaspberry PiおよびHUB2.0というメイン基板が露出されます。その横にさらにブレッドボードが見えますが、これはpi-topPROTO+という電子工作用のモジュールで、今回これが標準搭載されています。
旧バージョンのときはpi-topPROTOは別売りで、さらにpi-top本体の発売後しばらく入手可能にならないという問題がありましたので、今回これが標準搭載されたのは良い点だと思います。
旧バージョンのpi-topでのpi-topPROTO
なお、このpi-topPROTO+からRaspberry Piの全てのGPIOにアクセスできるのですが、今回そのピンがArduinoなどと同じメスピンになっているのですね。
個人的には、Raspberry Pi本体と同じくオスピンの方が混乱が少なくて良いと思うのですが、メスピンの方がショートのリスクが小さい、などと配慮した結果なのかもしれません。
ただまあ、そもそもHUB2.0のすぐ隣で電子工作をするというのはかなりリスクが高いですよね。手がすべってHUBを壊してしまったらそれでpi-topが使えなくなってしまいますから。
なお、キーボードをスライドさせると、Raspberry Pi本体に取り付けたSDカードが見えるようになりますが、これを手で取り外すのは困難です。
そのため、SDカード取り外し用の器具が添付されており、下図のようにSDカードをひっかけて引き抜けるようになっています。
SDカード取り外し用の器具の使い方
世の中には、Raspberry Pi本体からSDカードを取り出すことを全く考慮していない商品もありますので(例えば公式のディスプレイケース)、このような対処法が用意されているのは好ましいことだと思います(必ずしもスマートな方法ではないとは言え)。
4. 各種端子へのアクセス
USB端子2つ、LAN端子、およびイヤフォンジャックへは下図のように背面からアクセスできるようになっています。
USB端子2つ、LAN端子、およびイヤフォンジャック
旧バージョンでは、これらの端子へのアクセスが悪く、下記のようにUSBハブやヘッドフォン用の延長ケーブルを用いるなどの工夫が必要でした。LAN端子に至っては本体に固定するためのねじを取り外せばなんとか使えるかも?というレベルでした。
旧バージョンのpi-topでのUSB端子とイヤフォンジャックの利用
このように、これらの端子へのアクセスは旧バージョンから比べるとかなり進歩したところです。
ただし、残念な点もあります。下図のように公式カメラモジュールを接続する端子が銀色のカバーに塞がれており、実質公式カメラモジュールが使えなくなっているのです。銀色のカバーは、GPIOとHUB2.0との接続や、CPUのヒートシンクの役割をしているものです。
銀色のカバーを取り付ける前にあらかじめ公式カメラモジュールを取り付けておけば恐らく使えるでしょうが、銀色のカバーは頻繁に取り外すものではないので、公式カメラモジュールの使用を諦める方が多いのではないでしょうか。これは、非常に詰めが甘いと感じた点です。
公式カメラモジュールを接続する端子がふさがれている
5. バッテリー
バッテリーについては、今後使用していく上でどうなるか検証していきたいと思います(個人的にはあまり期待していませんが…)。恐らく、「過充電、過放電しないよう気をつける」という方針で使うことになりますので、すぐ利用不能になることはないのではないでしょうか。
6. まとめ
そんなわけで、旧バージョンのpi-topを体験した方ならば、その欠点の多くがpi-top v2で解消されていることに驚くのではないかと思います。2015年当時からこのクオリティで出ていれば…と思いますが、ものづくりはそんなに甘くないということなのでしょう。なお、この出来の良さだけに、公式カメラモジュールが使えないという詰めの甘さは残念なところです。
さて、ここまでpi-top v2について比較的高めの評価を与えてきましたが、これはあくまで旧バージョンのpi-topと比較してのことです。
Windows PCの代替にしようとか、子供にはじめて与えるPCにしようとか、という用途に用いるのは慎重になった方が良いと思います。大手メーカーの製品のように「正常動作し、なおかつ保証があって当然」というものではありませんので。
(そもそも英語キーボードの時点で、人を選ぶ商品ではあります)
「ラズパイ4対応 カラー図解 最新 Raspberry Piで学ぶ電子工作」、「実例で学ぶRaspberry Pi電子工作」、「Raspberry Piではじめる機械学習」を執筆しました。
Pi-top旧Versionで、バッテリを認識しなくなりました。復旧方法はないのでしょうか?
返信削除https://support.pi-top.com/en/support/discussions/topics/6000023775
削除上記にて多くの方が不満を訴えていますね。
サポートから交換バッテリーを入手したという方もいますが、
サポートから何の返答もないという方も多いようです。
復旧方法があるのかはわかりませんが、バッテリーは
下手に手を出すと危険だろうと思います。
上記を見る限り、交換バッテリーを入手したとしても、
また壊れることの繰り返しになりそうですので、
私としては、そういう製品だと諦めています。