はじめに
これまで、をAndroid Bazaar and Conference 2013 AutumnやMaker Faire Tokyo 2013などで展示してきました。
三輪ロボットにはnode.jsが動作するRaspberry Piが搭載されており、Firefox OS/enchantMOON/android/iOSなど、OSに依存しない操作がWeb技術により可能になっています。
Raspberry Piはモバイルバッテリーで稼働させているのですが、展示を行う上ではこのバッテリーの消費が早いのが問題でした。
Raspberry PiではLinuxのディストリビューションであるRaspbianが動作しており、シャットダウンと再起動にそれなりに時間がかかります。そのため、展示を見に来て下さっている方がたくさんいる状況でモバイルバッテリーの残量を示すLEDが赤くなると、どのタイミングでバッテリーを交換すべきか悩んでしまうわけです。
そこで、せめてモバイルバッテリー一つで展示1日(典型的には10:00~17:00)をもたせられないか、検討してみることにしました。
検討するのは
- 電力消費の小さいWifiドングルを探す
- Raspberry Pi上のレギュレータ(RG2)をDC-DCコンバータに変更する
の2点です。
電力消費の小さいWifiドングルを探す
最も電力を消費しそうなのはWifiドングルなので、消費電力の小さいものを探すのが効果がありそうに思いました。さらに、私がこれまで用いていたのはPCI GW-US54Miniというかなり古いものなので、これも電力消費が大きい原因の一つと思われました。
なお、この三輪ロボットは図の赤矢印で示すように、Raspberry Piと、テザリング機能をオンにしたXperia rayとの間でWifi通信を行っています(見ての通りとても近い)。
なお、この三輪ロボットは図の赤矢印で示すように、Raspberry Piと、テザリング機能をオンにしたXperia rayとの間でWifi通信を行っています(見ての通りとても近い)。
IO-DATAのものが2つありますが、これらにはハイパワータイプと超小型タイプという違いがあります。なお、下図で最も左にあるのが、これまで用いてきたPCI GW-US54Miniです。古いだけあって大きいですね。
計測は、Raspberry Piに安定化電源で5Vを供給し、その電流を読むことで行います。電流は、Raspberry Piを起動し、命令を受け付ける待機状態になった頃に読みます(実際の展示でも、待機している時間が長いと思われるため)。
なお、結果を示す前に注意ですが、以下のデータは、上の写真で示したように、非常に近い距離でWifi通信を行う際のものです。通信の距離が遠くなると電流は大きくなりますし、そうなった際に電流の大小関係は逆転する可能性があります。そのため、以下のデータは私のケースのみに当てはまる、あくまで目安と考えて下さい。
結果は上記のように、IO-DATA WN-G150UMKが最も電流の小さいWifiドングルでした。なお、実際には電流の揺らぎが大きいので、平均的な値を記しています。
どのWifiドングルもRalinkのチップを使っているようなので、あまり違いが出ないのではないかと予想していたのですが、IO-DATAの2つは電流が小さくなりました(上で記したように、あくまで私のケースでは、ですが)。
変更前
|
変更後
|
||
PCI GW-US54Mini | 0.58A | IO-DATA WN-G150U | 0.45A |
IO-DATA WN-G150UMK | 0.39A | ||
LOGITEC LAN-W150NU2AB | 0.50A | ||
BUFFALO WLI-UC-GNM2 | 0.50A |
結果は上記のように、IO-DATA WN-G150UMKが最も電流の小さいWifiドングルでした。なお、実際には電流の揺らぎが大きいので、平均的な値を記しています。
どのWifiドングルもRalinkのチップを使っているようなので、あまり違いが出ないのではないかと予想していたのですが、IO-DATAの2つは電流が小さくなりました(上で記したように、あくまで私のケースでは、ですが)。
というわけで、以後、IO-DATA WN-G150UMKを用いることにします。
Raspberry Pi上のレギュレータ(RG2)をDC-DCコンバータに変更する
(注1)本項の内容は、Raspberry Piを破壊する可能性がある(文字通り壊さないと実現できないのですが…)ため、自己責任でお願いします。
(注2)本項の内容は、2014年7月に出たModel B+を用いることで同様の効果が得られるはずです。
(注2)本項の内容は、2014年7月に出たModel B+を用いることで同様の効果が得られるはずです。
実は上でのWifiドングルの交換でほとんど満足してしまっているのですが、後で思い返して気になるのも嫌なので、もう一つのレギュレータの交換についても試してみます。
今回検索して初めて知ったのですが、Raspberry Piを低消費電力化するには、RG2というレギュレータを交換する、というのが定番のようで、既にいくつかの報告があります。
これらの成果を参考にさせて頂き、RG2をDC-DCコンバータに変更してみます。
用いたのは、取扱いが容易そうだった
です。
作業は
- 表面実装されたRG2を取り外す
- DC-DCコンバータを取り付ける
の順で進めます。
1.の作業は「Replacing the Raspberry Pi's Main Voltage Regulator」にて細かく解説されています。RG2のヒートシンクも兼ねているTABですが、ヒートシンクにはんだをモリモリと盛れば熱が効率的に伝わり簡単に取り外せます。
2.のDC-DCコンバータ取り付けですが、下図のように3点(PSピンをGNDに接続するので正確には4点)を接続しました。DC-DCコンバータはユニバーサル基板の裏に隠れています。
接続がちょっと安直すぎるかなと思いましたが、SDカードへのOSのインストール、Xを起動してのクライアントとしての利用、など一通りの機能は問題なく動作しました。
三輪ロボットでの電流を調べた見たところ、下記のようになりました。
変更前
|
変更後
|
||
純正Raspberry Pi + IO-DATA WN-G150UMK |
0.39A | 改造Raspberry Pi + IO-DATA WN-G150UMK |
0.34A |
およそ50mAだけ電流が減っていることがわかります。他のWifiドングルでも試してみましたが同様の結果が得られました。
「Replacing the Raspberry Pi's Main Voltage Regulator」でもやはり50mA程度の減少が報告されていますので、こんなものでしょう。
効果は?
既に示したように、Wifiドングルの変更とDC-DCコンバータの利用により、待機状態の電流は0.58A→0.34Aと大幅に減少しました。それに伴って待機時のモバイルバッテリーの持ちが良くなっていることは確認済です。ただし、実際の展示では
- 三輪ロボットの操作時(=通信時)に電力消費が増える
- 展示会場ではWifiの干渉によりさらに電力消費が増えると考えられる
などの理由により、「モバイルバッテリーで展示1日もたせる」という当初の目的が満たされているかはわかりません。
この点についてはAndroid Bazaar and Conference 2014 Springの展示にて検証してみたいと思います。
(追記 2014.3.22)
展示にて検証したところ、10:00~17:00まで、一つのモバイルバッテリー(5400mAhのQE-QL201)で動作可能でした。ちょうど展示終了の17:00間際にLEDがオレンジ→赤と変わったので、あと1、2時間はいけたのではないかと思います。
低消費電力化した効果があって良かったです。
Raspberry Pi Type Aに変更してさらなる低消費電力化
(2014.6.16追記)
上記の試みはRaspberry PiのType B (Model B)を用いたものなのですが、
Type A (Model A)を用いると
- Ethernetインターフェイスが省略されている
- USBが1ポートのみ
により、さらなる低消費電力化が見込めます。
ただし、私の場合USBポートとして
- Wifiドングル
- USB-シリアルコンバータ(5Vタイプ):arduino mini pro(5Vタイプ)との通信用
の2つのデバイスを用いているので、そのままではType Aへ変更できません。
そこで、シリアル通信をUSB-シリアルコンバータからGPIOのUARTピンに変更し、
USBポートを1ポートで済むようにしてみました。
USBポートを1ポートで済むようにしてみました。
下記のサイトを参考にしました。
- Raspberry Piでシリアル通信:シリアルコンソールの停止など
- 3.3V系-5V系デジタル回路の簡易レベルシフト回路:通信相手がarduino mini pro(5Vタイプ)なので
また、条件をそろえるためにこのType AもDC-DCコンバータを用いて改造しています。
(注)なお、この「改造」は、2014年11月に出たModel A+を用いることで同様の効果が得られるはずです。
結果は下記の通りです。
(注)なお、この「改造」は、2014年11月に出たModel A+を用いることで同様の効果が得られるはずです。
結果は下記の通りです。
変更前
|
変更後
|
||
改造Raspberry Pi Type B + IO-DATA WN-G150UMK |
0.34A | 改造Raspberry Pi Type A + IO-DATA WN-G150UMK |
0.20A |
劇的に電流が減ったので驚きです。
ここまで消費電力が下がると、現在はXperia rayで行っている映像配信を
Raspberry Pi+カメラモジュールで行っても良いかな?という気がしてきます。
ただし、今まではコマンドのみの受信だったものに、映像の送信を加えると
ここまで消費電力が下がると、現在はXperia rayで行っている映像配信を
Raspberry Pi+カメラモジュールで行っても良いかな?という気がしてきます。
ただし、今まではコマンドのみの受信だったものに、映像の送信を加えると
通信量が増えて新たなトラブルが起こるかも知れない、とは思います。
おまけ
この三輪ロボットはシールド交換の要領でBluetooth + androidによる操作も可能になっています(動画はこちら)。下図のようにPIC24FJ64GB002+Bluetoothドングル(これもちょっと古いBuffalo BSHSBD02BK)で実現していますが、こちらの電流もせっかくなので調べてみたところ、- 0.04A
でした。ちょうど一桁違う感じですね。
「ラズパイ4対応 カラー図解 最新 Raspberry Piで学ぶ電子工作」、「実例で学ぶRaspberry Pi電子工作」、「Raspberry Piではじめる機械学習」を執筆しました。
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